ダンゴムシ営業終了

今日はダンゴムシと遊びたくて、地面を見ながら歩いた。

しかし、残念なことに彼らの営業は終わっていたようだった。

 

落胆はしたが、彼らの営業後の生活が気になった。

そのため、私は無駄に容量のあるこの脳みそを活用することにした。

今から、私の想像を話したいと思う。

 

 

彼らの中には、仕事終わりにバーへ行く者もいる。とてもおしゃれだ。

「やあ、マスター。いつもの。」

そういって出されるものは、隣町の新鮮な落ち葉をブレンドした泥水。

「いいね。これは隣町のものかな。やはりあそこは水がいいからね。私も出張で最近行

 ったよ。やはり水が違う。こことは大違いだ。全くこの町はどうにかならないのか

 ね。水がいかん水が。で、これはやはり隣町のかい。」

そう言う彼はおそらく得意げな顔をしているのだろうが、いかんせん虫なので表情がわからない。

あと、なんて失礼な輩なんだ。隣町を褒めるならそれだけでいいのに、他の町を、それも自分が住んでいる町をディスるなんて。

マスター、ここはガツンと諭してあげ

「そうです。流石ですね。」

あ、褒めるんだ。

マスターは褒めた。だが、本当に褒めているのかはわからない。

なんせ表情がわからない。

このマスターの心のうちは、神のみぞ知る。

 

このようなとても優雅な夜を過ごしていそうだ。

 

さて、他の者はどうだろうか。

おや、何やらカフェで話しているようだ。

 

「ねえねえ、彼にいっぱいの落ち葉をもらっちゃった~。」

彼らの財産は落ち葉のようだ。つまり、人間的には「私貢がれちゃった」だろう。

「え~いいな~。私なんて水っ気の多い、落ち葉がたくさんあるところに家を作ったか

 ら、一緒に住もうって言われただけだよ~。」

(訳:めちゃめちゃ立地のいいところに家建ててもらっちゃった。あと同棲するから。)

落ち葉が栄養のある肥料となるには、湿っていることが条件だ。言うなれば、超高級住宅地に家を建ててもらったことと同義だ。スゴイネー。

 

つまり、この人たちは恋人の財力を自慢しあっているようだ。

どの世界でも、マウントほど終わりがなく虚しいものはない。

 

 

しかし、これらのことをあの丸いフォルムでやっていると思うと憎めない。

今世は人だったが、来世はダンゴムシでもいいかもしれない。

 

だが、飲み物や食べ物が落ち葉や水といった種類の少ない点が、私が彼らになることを躊躇させる。

さらに、ダンゴムシにも人間のようなルールがある可能性が否めない。

 

きっと、どんなものに生まれ変わっても何かに縛られるのが理だろう。

それなら、こうしてしょうもないことを書いていても許される、人の方がいい。

 

 

 

 

【おまけ】

マスターの心の声

(はぁー。また自分の繊細舌自慢をしている。それならまだしも、自分が住む町まで侮辱するのはどうなんだ。何かを褒めるとき、何かを下げないと気が済まない性分なのか?前々から気にはなっていたが、もうこれはそういう人なんだな。よし、出禁にしよ。)

 

こうして、あるダンゴムシがおしゃれなバーを出禁にされたとかされてないとか。